正常と異常の風景・おままごと

その日は、ユイシアが出かけてから、ずっと押し殺した様な感情が扉の向こうから
漂っていた。
何かが起こるかもしれないし、起こらないかもしれない
だが、期待感で胸が高鳴るような
何とも表現のできない高揚感で、ぞくぞくとした怖気が朝から止まらなかった。

 


何が始まる?
その時、躊躇うように小さなノックの後、カチリと鍵の開いた音がした

 


「.......ユイシア様が呼んでいます」
「私共が案内いたしますので...」

「すみませんが、貴方の存在に納得できていない者もいますので、
 これで姿を隠してください」

 


きっと嘘だ。
納得できない者、それはそのまま目の前にいる人物達だろう
もしかしたらもっと仲間がいて、その場所にいるかも知れない
態々合鍵まで作って会いに来るような連中なら、この軍と敵だった頃に沈めた船の
知り合いかもしれないし、ただ特別扱いされている者を弄りたいだけかもしれない。

 

外は危ないんだよね、ユイシア。

 

でも......面白い事は起きるだろう。


くつりと喉の奥で思わず哂ってしまったが、それを誤魔化すように咳払いをして
差し出された布を頭からつま先まで隠れるように身体に纏わせる

 

「案内...よろしくお願いします」
暗い部屋から一歩足を踏み出した。

 

 


だってそろそろ退屈だったんだ。
さぁ、どんなショウを見せてくれるのかな?