先生あのね

体重が1Kg増えた。

 


これは、伏黒恵にとって一大事だった。

 


どれくらいだったかというと、体重計の前で下着姿で5分間立ち尽くした後、
おもむろにゆっくりと腕を上げ、
力強くガッツポーズをするくらい一大事だった。

 


食べても中々増えない体重と、筋肉だったが、ようやく。

 

 

ようやく、60Kgになった...!!!

 


はかり間違えかと、3回体重計に乗りなおした。

 


ちゃんと60Kgだった。

 


50Kg台と、60Kgでは、天と地ほど違う。
大げさではない。
決して。

 

(よしっ...!!!)

 

これでも、鍛えている分は食べようと頑張ったのだ。

 


それがやっと実を結んだ。

 

 

 

「五条先生、何か気づきませんか?」


自分の左胸をばしっと手て叩いて、待合場所に来た五条先生に問いかける。

 

いつも通り遅刻をしてきた五条先生だが、今日はもう問題じゃない。


この人なら、分かってくれるはず。

 

俺は、60Kgになったんだと!

 


さあ、見ろ!!

 


「んー?いつものカッコかわいい恵だねぇ。」

 


目の前に来た五条先生は、少しかがむとにこりと笑った。

 

「こう、全体的に。」

 

「うーん、細...いやいや、恵だなぁ。」

 

何か不穏な言葉を言いかけた気がするが、それどころではないとばかりに言い募る。

 

「ちゃんと、俺のことを見てください!」

 

埒が明かないと五条先生の方に身を乗り出したとき。

 

五条先生は、くいっと目隠しを持ち上げると真っすぐな視線で見てきた。

 


「見てるよ。いつも、ずっと。恵のことを。」

 

 

 

そうじゃなくて!!と叫びそうになったが、


その真剣な声に顔が赤くなるのを止められなかった。

 

 

 

 

 

「何あれ。これから任務だっつーのに何が始まったの。」


「伏黒、朝からそわそわしてたけど五条先生に会いたかったんかな?」