乙女

秀にはアイスコーヒー、僕はミルクティー


「秀のコーヒーちょっとちょうだい」


ふたり別々のものを頼んだのだから、半分こも楽しいよ
コーヒーの苦味も、ミルクの甘さも一緒に

 

でも、むっとした顔をするから、慌ててコーヒーに伸ばした手を止める
そうか、僕だけがもらおうとしちゃだめだ!

 

「あっ、ミルクティー秀も飲む...」

「オレ、別にオカマと付き合いたいわけじゃないんだけど」

「...え?」

「いちいちお前、言ってる事女みたいで嫌だ」

 

おっと、何か痛い、痛い痛い
僕は僕のままで、ただ喋っているだけだけど、何か可笑しかったのだろうか?
難しい。

 

とりあえず、ミルクティーを飲みつつ、にへらと笑ってみるけれど
確実に大きな大きな傷が、秀には見えないだろうけれど、できた
指が震えちゃって、目も鼻もつんっとするけれど、

僕はミルクティー越しに笑顔をつくった

 

僕は変わっていないはずだ
抱かれているうちに何かが変わってしまったのだろうか?
ああ、でも確かにテレビで映る恋人同士のやり取りを羨ましいと思った
彼氏としたいと思った

 

...そんな事を言う秀だって、無意識に僕の役割を「女」だと思っているくせに