無邪気さでとどめをさす

ゆうしにはおしえてやるよ

内緒だからな?

 

 

最近やったドラマの話だったか何だったか、流れは良く思い出せない。
よく喋る岳人の話題はどんどん変わっていくから。
こちらは声を聞きながら相槌を打ってやる

そう、もしかしたら岳人の友人の誰かに
彼氏が出来たとかそういう話だったかもしれない
くだらない悪戯が成功したとかの話だったかもしれない

教室に差し込む夕日が綺麗で、中々お互い帰ろうといえずいつまでも
窓の外をチラチラと見ながら喋っていた。

 


ふと、沈黙が落ち
岳人と夕日の両方にあった意識を、前の席に座る岳人だけに合わせると
うつむいて考え込むように眉を寄せていた

 

「どないしたん?」

「......」

 

いつも騒々しいくらいに喋る岳人が静かになると、途端に寂しい空気が
周りに漂う
それに沈黙は自分の心臓に悪い
胸にある想いの鼓動が聞こえてしまいそうだから。

 


そろそろ飽きてきたんやろか?、なら帰るかと言おうとすると
がばっと力強く岳人が顔を上げた。

 

「侑士に、侑士に教えてやるよ!」
「...なん?」
「つーか、聞いて...ほしい」

 


最近、ふとした時に考え込むような我慢をするような表情をする岳人だったから
何か悩みがあるのかとは思っていたけれど。
ついにひとりで抱え込めなくなったのか、テニスの悩みなのか他の悩みなのか
「親友」としては、話してくれるのを待っていた。

 

「しゃーない、聞いたるわ」

 

あまりにも必死に見つめてくるのが可笑しくて可愛らしくて、夕日に染められて
鮮やかな色になった髪をくしゃっと撫でると、
やめろよ!と手を振り回しながら避ける

焦ったような、でも安心したような困ったような歪な笑顔から言葉が出た

 

 

「オレ......のことが好きなんだ」

 


一瞬刃物で胸を刺されたのかと思った
あまりの激痛が走り、恐る恐る自分の胸元を見たが、もちろん目に見える
傷跡などあるはずも無く。

 


相手にされないってわかってるけどさ!!と泣きそうになりながらも笑顔で
喚く声が遠くで聞こえる。
けれど、本当に悩んで、誰かに知ってほしかったのだろう。
自分の中に生まれた恋心を。
きっとはじめての。
どこかすっきりとした表情は生き生きとしている

 


「侑士、急にごめんな。でもずっと悩んでてもやもやしててさ...」
「......ああ」

 

誰かに聞いてほしかったんだと
頬を紅く染めて、少し困ったように笑う岳人に。

 

「なんやもう、乙女やなぁ。がっくんも」

 

うっせーよ侑士!と照れ隠しから、ばたばたと騒ぎ出す
応援したるわとこっちも笑ってやるけれど。

 

 

他の男を好きだというこの子を

無性に殺してしまいたいと思った